尿石症
前回の下部尿路疾患の話の中でちょろっと出てきた尿石症(特に尿道結石)について今日はお話します。
尿石症とは名前の通り、尿中に石ができてしまう病気です。石ができたとしても膀胱内に鎮座してるだけなら路傍の石なのでしょうが、この石が尿と一緒に膀胱から外へ出ようとした時に、途中の尿道という細い管で引っかかってしまう(尿道結石)と一大事です。
他にも腎臓の腎盂という部分に石ができる腎結石や、腎臓と膀胱の間の管(尿管)に石ができる尿管結石などがありますが、今回は最も発生頻度の多い尿道結石についてもう少し深くお話しようと思います。
尿道結石ですが、雌雄によって尿道の形が違うため(雄が長くて細い)圧倒的に雄で発症します。(むしろ雌でなった子を見たことがない。)また肥満傾向のある子で発症が多いと言われています。
また、水を飲まなくなる冬場に発生が多いのもこの病気の特徴です。
次に症状についてのお話です。
初期の段階では排尿時の痛みがあるようです。(実は人間も尿道結石になりますが、とっても痛いそうです。)しかし動物というのは素直に痛いとは言ってくれないので、よく観察してないと気づかないことも多いですが、主に
・トイレにかがんでいる時間が長い
・排尿時に変な鳴き声をする
・尿がざらざらする
・尿が赤い
・尿が出ていない
などの症状を示します。
特に尿が出ていない場合は膀胱が破裂してしまったり、本来体外へ排出されるべき尿素など有害物質が溜まってしまい神経症状などを起こしてしまう尿毒症になってしまったり、一刻を争うことがあるので、すぐに病院に連れてきてください。また対処が遅れると後遺症として腎不全になってしまうこともあります。
続いてなぜ石ができるかのお話です。
尿中にできる石の主成分は石の種類によって異なりますが、最も発生頻度が高い結石であるストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム結石)はマグネシウムが、近年発生が増えてきたシュウ酸カルシウム結石はカルシウムなど、ミネラル分が主成分となっています。
これらミネラル分は普段の食事や水から体内に摂取するのですが、不要な分は尿として排泄されます。
過剰にミネラルを摂取すればするほど、尿中のミネラル量が増え尿石症を起こしやすくなります。
ただし尿中にミネラルが含まれているだけで石ができるわけではありません。
膀胱という器官は飲む水の量と深く関わりのある器官で、水を飲む量が少ないと膀胱内の尿は少なくて濃いものとなります。(尿自体を作っているのは腎臓ですが。)
濃い尿(つまりミネラル濃度の高い尿)はミネラル分が結晶化しやすく、結晶が集まると尿石となってしまいます。小学生のころ、食塩水にヒモを垂らして結晶を作る実験をしたことがある方もいると思いますが、あれと同じ原理です。
また濃い濃度でミネラル分が尿中にあるだけで結晶化するわけではなく、結晶化するためには核となるものが必要で、ちょうど食塩水の実験の中の”ヒモ”にあたる役割をするものが必要です。
これは過剰に摂取したタンパク質が尿中に排出されたものだったり、ストレスや細菌感染等による膀胱炎によって膀胱粘膜からはがれ落ちた細胞だったりします。
と、ながながと説明しましたが、尿石症の原因をまとめると
・過剰なミネラルの摂取
・飲水量低下による尿中ミネラル濃度の上昇
・ストレスや細菌感染等による膀胱炎
などが重なりあうことで発症する病気です。
正直、家でごろごろしてるわんちゃん、ねこちゃんのどこにストレスを感じる要因があるのかは不明ですが、(何度猫に生まれればよかったなぁと思ったことか。野良は嫌だけど。)
彼ら(彼女ら)なりにいろいろとストレスはあるようで、それを取り除くのは安易な事ではないので、他のことで予防、再発防止することが大切になります。
予防方法ですが、まず大切なのは普段摂取する食事や水です。
食いつき重視でミネラルバランス等の配慮のされていない安価なペットフード、おやつ類(特ににぼし)や手作り食、またミネラル分の多い井戸水の継続的な摂取が原因となることが多いです。
ただし、ミネラル分は制限すれば良いというわけではなく(特に成長期や妊娠中)、何事もバランスよく摂取することが大切です。特に一度尿石症になったわんちゃん、ねこちゃんはフードによる再発予防が大切ですので、きちんと獣医師と相談した上で食事管理することが大切です。
また膀胱炎の予防同様、水をたくさん飲むことも大切になります。
特に冬場は水が冷たくなり、水を飲むのを嫌がる子もいるので少し温めてあげるなどしてあげると良いかもしれません。
と、ながながと書きましたが、この病気は場合によっては命に関わることもありますので、尿がでてないかな?出にくそうかな?と思ったらできるだけ早く病院に行ってくださいね。
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